ひろし日記④ あるお客様
2014年8月31日
今回は、僕の仕事中でのエピソードです。
クラシアンでは節水トイレを格安で取付けることができます。
大阪でも新聞広告を掲載していますのでご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
これがおかげさまでご好評いただき、僕たち見積、工事にかかるスタッフは大忙しです。
2台トイレがあるお宅では両方共ご依頼いただいたり、多い時には、スタッフ一人あたり週に4~5台工事する事もあります。
そんな中、その日はある一般のご家庭のトイレ工事をさせていただきました。
ご主人様にあいさつして工事にとりかかっていると、何か視線を感じます。
ふと顔を上げると中学一年生くらいの男の子がじっと見ています。
彼は僕と目が合うと、「ちょっと見ててもいいですか?」
お子さん、特に男の子は興味があるのか、よく作業を見にこられる事が多いため、彼ともしばらく世間話をしながら作業していました。
すると、だいぶうちとけたのか彼は「俺、この家でトイレそうじ担当やってんで。けっこうキレイやろ」と、いつの間にか敬語ではなくなっています。
「そうか、じゃあ新しいトイレもキレイにしたってな」
「うん。わかった、まかせといて。」
そんな会話をしながら、今までのトイレを外まで運ぼうとした時、
「俺も手伝わして。こっち持つわ。」
「えっ汚れるし、重いからええよ。」
「大丈夫やって。俺がいつもそうじしててんで」
と彼は言い、無理矢理トイレの片方を持って外まで運びました。
そして車の中まで運び、僕が新しいトイレの封を切っている時、彼が今まで使っていたトイレを見ながら小声で言いました。
「バイバイ。今までありがとうな。」
それを聞いた時、うしろから誰かに頭をたたかれた気分でした。
そうか。あのトイレは彼が生まれる前からあるんだ。
彼との間には、いろんな思い出があるんだ。
タンクに貼ってあったキャラクターのシールも、彼が貼ったのでしょう。
彼が小さい頃、このトイレでずっとトイレトレーニングをしていたのかも知れない。
トイレそうじ係になって、始めて責任感を持ってそうじをしていたのかも知れない。
親に怒られた時も、このトイレにこもって涙をぬぐっていたのかも知れない。
そういう思い出のあるトイレを、僕が今交換している。
僕は今、仕事として何台ものトイレを交換させてもらっていますが、日常の流れで事務的になっていないだろうか?
この少年のピュアな気持ちの前に、自分が恥ずかしく思えました。
数日後、たまたまその少年の住む街に別の仕事で向かっている時でした。
交差点で信号待ちをしていると、横断歩道を数人の学校帰りの中学生が歩いていました。
その中のひとりが、僕に気づき手を振ってきました。
あの時の少年でした。
少年は無邪気な笑顔でこちらに走ってきて
「おっちゃん、こないだありがとう。新しいトイレめっちゃそうじしやすいわ!」
「そうか。また大事にしてやってな。」
信号が青に変わったため、すぐに発車しました。
うしろからずっと手を振ってくれる彼に対して、僕は心の中でっぶやきました。
「こちらこそ、ありがとう。」